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概要

ご挨拶 概要 組織・メンバー

教育プログラムの背景教育プログラムの背景

熊本大学大学院医学教育部ではこれまで、生体医科学専攻、病態制御学専攻、臨床医科学専攻、環境社会医学専攻の4専攻体制のもと、医学・生命科学の深い知識を有する研究者、病態学・診断学に精通した医師・研究者、高度な臨床医学・医療科学に習熟した医師、予防医学・法医学・生命倫理学を追究する専門家の育成に取り組み、それぞれに成果を収めてきた。しかし、臨床医学・生命科学が急速な発展を遂げ、医療・保健・倫理等をめぐる課題がますます複合化する中で、先端的な生命科学の知識を背景として新たな治療法を開拓する臨床医、臨床医学の将来展望を見据えて新たな分野に挑戦する基礎研究者、先進医療を理解しその推進に貢献するコメディカル、環境医学・社会医学のマインドを持ち地域に連携した臨床医学研究を行う医師・基礎研究者など、臨床・基礎・社会医学の領域を越えた新たな人材の育成が求められている。
このような社会的要請を背景として、分野横断的な先端教育を実践するため、医学教育部では平成20年度より従来の4専攻を1専攻にまとめて臨床・基礎・社会医学分野の境界を取りはずしたカリキュラムを新たに編成し、既に実施されていた「エイズ制圧をめざした研究者育成プログラム」に加えて「代謝・循環情報医学エキスパート育成コース」、「発生・再生医学研究者育成コース」、「がん博士育成プログラム」を新設するなど、臨床・基礎・社会医学一体型の大学院教育改革を実現する体制を構築した。

教育プログラムの必要性教育プログラムの必要性

多様な学問分野が協力して取り組むべき現代の重要課題の1つとして、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症などの生活習慣病の病態解明と、これに基づく治療や予防対策がある。生活習慣病の病態を解き明かす鍵は、代謝・循環調節に関わる生体内情報ネットワークの解明にある。一方で心筋梗塞、腎不全、糖尿病性壊疽など生活習慣病の終末像である器官の組織的・機能的破綻に対して再建・再生医療が試みられている。
本学のこれまでの大学院教育において、代謝・循環調節領域の専門医や研究者、発生・再生医療における研究者の育成には十分な成果を挙げてきた。しかし、生活習慣病を克服するためには、例えば膵β細胞再生や血管新生治療などにおける代謝・循環器臨床医学と発生・再生医学の融合、臓器移植等における生命倫理・医療倫理の確立、生活習慣病のヘルスプロモーションにおける臨床医学と疫学・予防医学の連携などが必須であり、臨床・基礎・社会医学の個々の領域を超えた知識・技能を持つ卓越した医師・研究者・コメディカル等の育成が必要である。
医学教育部では個々の学問領域における先端的研究・教育が独立して行われてきたが、上記の目的を達成するためには医学教育部博士課程の専攻を統合することにより得られた教育体制の柔軟性を活かして、代謝循環情報医学と発生・再生医学を広くカバーする領域横断的な教育を行う必要がある。本教育プログラムは、生活習慣病医療をモデルとした臨床・基礎・社会医学一体型先端教育のプロトタイプとしての重要な位置付けを有する。

教育プログラムの内容と特徴教育プログラムの内容と特徴

本教育プログラムでは、①既に実施されている「代謝・循環情報医学エキスパート育成コース」及び「発生・再生医学研究者育成コース」を連携させ、先端医学教育のより効果的な実現を図る。②代謝循環制御学、発生・再生医学、環境社会医学、生命倫理学等の講義科目を相互に履修させ、メタボロミクスや幹細胞生物学に関する実習の一部を共通化し、生活習慣病と再生医療を関連づけた専門知識・技術を習得させる。③演習では、異分野の学生・教員のグループワークによるProject-based learningを実施して広い視野から問題解決能力を養うほか、代謝・循環情報医学と発生・再生医学に関するセミナーや学会出席を奨励して単位化する。④研究指導科目では、先端臨床分野の専門医師育成に向けた代謝病診断・治療学や再生・再建治療学研究、先端医学分野の研究者・技師育成に向けた臨床メタボロミクスや発生・再生医学研究、先端医療分野の専門職業人育成に向けた疾病予防や生命・医療倫理に関するフィールドスタディを実施する。⑤研究指導においては、学生による定期的研究中間報告に対して異分野の複数教員が助言を行う合同プログレス・レポートを実施するなど、臨床・基礎・社会医学を横断する組織的大学院教育を実践する。⑥授業科目を英語で開講するほか、サマー・フェローシップ派遣や海外短期共同研究プロジェクト派遣等により国際的な人材養成に向けた教育を行う。これらの取組については、平成19年度以前に博士課程に入学した旧4専攻の学生や教育コースを履修しない学生であっても上記の人材育成目的に合致すれば積極的に参加させる。このような教育を通して、生活習慣病の診断・治療及び再生医療に携わる先導的専門医師、代謝分子を標的とした病態解明と発生・再生医学の確立に貢献する指導的研究者・臨床検査技師、生活習慣病に関するヘルスプロモーションや移植コーディネーション等の優れたコメディカルの育成を図る。


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