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実施記録

学会での研究発表支援学会での研究発表支援


成果報告書

大学院4年 神経内科学分野 森 麗

■発表学会・場所: 44th Annual meeting of the Society for Neuroscience 2010, San Diego Convention Center, San Diego, California
■日時: November 13-17, 2010
■演題(タイトル): Derlin-1 overexpression ameliorates mutant SOD1-induced endoplasmic reticulum stress by reducing mutant SOD1 accumulation

発表の概要:
 SOD1変異による家族性ALSのモデルマウスでは、変異SOD1蛋白が運動ニューロンの小胞体(ER)内に蓄積し、運動ニューロンがERストレスによるアポトーシスを来す報告があり、運動ニューロン変性のトリガーとなっている可能性に着目した。小胞体関連分解に関連する分子のひとつであり、小胞体膜に局在するDerlin-1は、近年misfold蛋白の逆行性輸送の中心的局面を担うことが明らかにされた。野生型および変異型SOD1を発現する神経細胞において、Derlin-1を過剰発現し、変異SOD1蛋白の発現に及ぼす影響を観察した。Derlin-1およびSOD1(WT, G93A, G85R)をNB2a細胞に共発現すると、Derlin-1は野生型および変異SOD1(G93A、G85R)ともに共局在を示し、また、Derlin-1過剰発現によるアポトーシス・細胞生存性を顕微鏡における核でのapoptosis変化の観察、MTT assayにより評価したところ、変異SOD1の毒性が軽減された。さらに、これらの細胞由来の各分画においてERストレスの軽減がみられた。また、細胞内SOD1含量の低下もみられたが、TaqMan Real-time RT PCRでの検討では、Derlin-1の過剰発現によるSOD1のmRNAレベルに対する影響はなく、マイクロゾーム分画では、有意にSOD1含量の低下がみられた。以上より、外因性Derlin-1発現は細胞質への逆行性輸送を促進することによって変異SOD1蛋白の小胞体内含量の低下をもたらし、ERストレスを軽減する可能性が示された。

質疑応答:
 proteasome/autopagy inhibitorを使ってみたらどうか、RNAiなどの検討はどうかなど、reviewerのコメントと同じような質問を受け、今回出していないデータをお話しました。

学会参加・発表で得られた成果:

 学会のあったSan Diegoは、カリフォルニア南部の中でも、独特の雰囲気の都市で、メキシコまでわずか30kmという地理的条件、スペイン統治時代の歴史的背景などが相まって、この町はエキゾチックな香りが漂っています。雨が少なく温暖な気候、青く高い空にまばゆい陽光、風光明媚な海岸線など、訪れる人を魅了してやまない都市、San Diegoには、多くの研究者が住んでいて、研究が活発にされているのも、これらのことが、もしかしたら理由のひとつなのかもしれません。
 私の参加した、The annual meeting of the Society for Neuroscience 2010は、30,000人以上が出席する、世界最大の神経科学カンファレンスの一つです。研究者や臨床医の第一人者が、脳、神経系統、および、関連する疾患の最新の研究結果について議論します。最初は、私が今まで参加した、どの学会よりも人が多く、さらに議論が活発であることに圧倒されました。
 今回のポスター発表において、アメリカの研究者はもちろん、多くの国々から来た研究者達に、自分の研究を知ってもらえ、また、かなり熱心に質問をしていただき、ポスターのdataを後で送ってほしいといわれる方も多く、非常に貴重な経験が出来たと考えています。せっかく知り合った研究者達とは、これからさらに交流を深め、刺激をもらい、自分の研究に活かせればと考えています。



その他感想:
今回、初めて海外の学会に参加させていただきました。質疑応答が大変活発で、かなり批判的な意見を言われる方もいて、それに反論できるような自分の意見をしっかり持ち、また、その意見を自由に表現できるような英語力が必要だと肌で感じ、国内では得難い貴重な経験ができました。大学院生学会発表旅費等支援により多くの学生が海外の学会に積極的に参加できやすくなることは、とてもすばらしく感じ、支援していただいて大変感謝しています。