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実施記録

学会での研究発表支援学会での研究発表支援


成果報告書

大学院2年 循環器病態学分野 堀尾 英治

■発表学会・場所: American Heart Association Scientific Session 2010
■日時: November 13-17, 2010
■演題(タイトル):Angiopoietin-like Protein2 (Angptl2) promotes coronary endothelial dysfunction and atherosclerosis

発表の概要:
近年、動脈硬化症が原因となる冠動脈疾患は、血管壁における慢性炎症性疾患であると捉えられている。我々はAngiopoietin-like protein2 (Angptl2)が、脂肪組織の炎症と全身のインスリン抵抗性を引き起こすことを報告した(Cell Metabolism 10;187-188, 2009)。今回、血管内皮から分泌されるAngptl2が血管の炎症を惹起し、血管内皮機能障害や動脈硬化を引き起こすかについて検討を行った。
ヒト冠動脈で免疫染色を行うと、Angptl2は血管内皮、動脈硬化性プラーク内のマクロファージに強く局在していることが分かった。血管内皮細胞ににhAngptl2を添加すると、ICAM-1、VCAM-1、e-selectinなどの接着因子の発現が上昇し、eNOSの発現が低下していた。血管内皮特異的にAngptl2を強制発現させたTgマウスでは野生型マウスにくらべ明らかに内皮依存性血管弛緩反応が障害されていた。ヒトの血漿サンプルでAngptl2濃度を測定したところ、健常群に比し血管内皮機能障害群、冠動脈疾患群では有意に血中Angptl2値が上昇しており、その値は高感度CRP値と有意な相関関係を認めた。また、低容量アセチルコリン負荷前後での冠血流速比(CBF ratio)とAngptl2値は逆相関していた。
 以上から、血管内皮より分泌されるAngptl2が血管の炎症を引き起こし、血管内皮機能障害や動脈硬化を引き起こしていると考えられ、今後新たな治療の標的となりうると思われる。

質疑応答:
Q.脂肪やマクロファージ由来のAngptl2は病態に関与しないのか?
A.免疫染色やReal time PCRなどの検討で示されているようにAngptl2は脂肪組織、マクロファージからも分泌される。どの細胞由来のAngptl2がどの程度病態に影響を与えるかについては、現在実験中である。

学会の雰囲気:
今回参加したAHAのScientific Sessionは循環器領域の学会の中では世界最高峰の学会であり、参加人数も数万人と大変規模の大きい学会である。近年の不況の影響で、規模が縮小傾向にあるらしいが、それでも規模は大きい。 会場は広かった。
活発なディスカッションがなされ、エキサイトした外国人の英語は、なかなか聞き取れなかった。

開催地の雰囲気:
シカゴはWindy City、風の街とよばれ非常に寒いことで有名である。今回の学会は11月中旬に開催されたが、やはり熊本よりずっと寒かった。
シカゴにはメジャーリーグ球団が2つあるほかに、有名なシカゴ・ブルズ、その他にもアイスホッケーやサッカーチームもある。シカゴ美術館や博物館もあり、見所満載な街である。その他、マクドナルドの公式の1号店があるらしい。学会期間中にそれらを堪能することを目論んだが、今回は残念ながら時間があわず、断念した。
また、シカゴで食べたステーキはボリューム満点でおいしかった。
最終日にアメリカ第4位の高さのWillis Towerの展望台に登ったが、足がすくんでしまった。



大学院生学会発表旅費支援と学会に関する感想:
大学院入学時に、在学中に1度は海外の国際学会で発表しようと思っていた。今回、AHA Scientific Sessionに参加して、大変刺激をうけた。
学会へ参加するには旅費、滞在費も含めると多額になる。このような制度があることで、海外の国際学会にも積極的に参加できる。大変有り難い。
学会に参加することで得た情報、刺激などを今後の研究活動に生かしたいと思う。
大変有意義でした。ありがとうございました。