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実施記録

学会での研究発表支援学会での研究発表支援


成果報告書

大学院1年 循環器病態学分野 六反田 拓

■発表学会・場所: American Heart Association Scientific Sessions 2010・McCormick Place - Chicago, IL
■日時: November 13-17, 2010
■演題(タイトル):Passive Exercise Using Whole Body Periodic Acceleration Device Promotes Angiogenesis in Mice Model of Hindlimb Ischemia


発表内容:
末梢動脈疾患において自動運動が血管新生に対して有用であることは、以前より報告されている。これまでの研究にてモーションプラットフォームを用いた受動運動であるwhole body periodic accelerationにより血管新生に関わるeNOSやAktの発現が増加することや、末梢動脈疾患患者の歩行距離等の自覚症状が改善することが報告されている。しかし、現在まで実際の血管新生に対する作用は明らかにされていない。今回我々はwhole body periodic accelerationによる受動運動が血管新生に有用であるか検討した。まず始めにC57Bl/6Jマウスを使用し、whole-body periodic accelerationを行い、筋肉にて蛋白ではAKT、eNOSのphosphoyrationの増加、また、mRNAではVEGF、FGF2、SDF-1等の血管新生に関わる因子が増加していることを明らかにした。また、大腿動脈を結紮・切除し下肢虚血モデルを作成し、その後コントロール群と45分のwhole body periodic accelerationを行う群とにわけ、レーザードップラーによる血流測定、内転筋でのCD31免疫染色を行い、whole body periodic acceleration群にて血管新生が促進することを明らかにした。また、eNOSノックアウトマウスで下肢虚血モデルを作成し、whole body periodic accelerationを行い、血管新生の改善効果が消失することを確認し、whole body periodic accelerationの血管新生に対する作用はeNOSを介した経路が重要と考えられた。次に内皮機能障害、血管新生遅延の原因となる糖尿病モデルであるDiet induced obesity mouseでもwhole body periodic accelerationにより血管新生が促進することを明らかにした。以上の結果よりwhole body periodic accelerationは運動の困難な高齢者や末梢動脈疾患患者における新たな血管新生治療となりうると考えられた。

質疑応答:
今回ポスター発表でしたが、ポスターの前で質問を受ける形式であり、下肢虚血モデル作成時の血管の結紮部位やwhole body periodic accelerationの詳細な方法等の実験の手法についての質問を受けました。また、WBPAの筋肉に対する直接の作用についてのコメントや、whole body periodic accelerationの第一人者の方よりwhole body periodic accelerationの反復回数の検討についてや固定方法についてのコメントを頂くことができました。


学会の雰囲気:
今回の学会であるAmerican Heart Association Scientific Sessionsは今年はアメリカのChicagoでの開催でした。循環器の学会としては世界最大規模であり、参加者も最大規模で、世界中から演題が登録されていました。演題も最新の研究や臨床試験に関する発表があり、全体的にとても活気に満ち溢れていたように思います。発表の質もさることながら、質問も多く、参加者の意識の高さが感じられました。

開催地の雰囲気:
今回の学会の開催地であるシカゴはシカゴ大火の後、急速に発展した高層ビル群が特徴であり、シカゴ市内ではかつて世界一の高層建築であったウィリス・タワーをはじめ、多くの高層ビルがあります。シカゴ川クルーズでは川からそれらの建築物をみることができ、街並みを楽しむことができました。また、シカゴ市は五大湖のひとつミシガン湖に面しており、湖岸の風景もとてもきれいでした。全体的に街はきれいで治安もよく、表通りでは夜間でも安全に過ごすことができました。

大学院生学会発表旅費等支援と学会に関する感想:
大学院での研究成果をまとめ、このような大きな国際学会で発表することは、非常によい経験であり、今後のモチベーションを高め、研究の新たなヒントを得る意味でも、大変重要なことだと考えられます。しかし、国際学会では特に交通費等で出費が多く、参加をするには敷居が高く感じられ、今回のような大学院生学会発表旅費等支援は大変有難いものでした。今回のAHAでの学会発表は自分にとっても、よい刺激となりました。今後この経験を糧にして、研究に励みたいと思います。