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実施記録

学会での研究発表支援学会での研究発表支援


成果報告書

大学院3年 循環器病態学 松原 純一

■発表学会・場所: American Heart Association Scientific Sessions 2009 Orlando, USA
■日時: November 14-18, 2009
■演題(タイトル): Pentraxin 3 is a Clinically Significant Cardiac Inflammatory Marker Associated with Left Ventricular Diastolic Dysfunction

発表の概要:
新しい炎症マーカーであるPentraxin3 (PTX3)は、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1、酸化LDL等)の刺激によりendothelial cell,dendrtic cell, macrophage, fibroblastなどの様々な細胞から産生される。最近の研究ではPTX3が急性冠症候群や心不全予後との関連が示されている。今回、拡張障害における心不全でもPTX3がhsCRPと比べて有意なfactorとなりうるかまた、心臓からの産生について検討した。
対象群に比べ拡張障害心不全群において、BNPやPTX3は有意に上昇していたが、hsCRPでは有意な差は認めなかった。また、冠動脈造影を受けた患者において、aortic rootとcoronary sinusからサンプリングし、心不全患者と対象群において心エコーにより拡張障害を有する群では心臓からPTX3が産生されていることが示された。拡張障害のない群では産生されていなかった。多変量解析では拡張障害による心不全においてhsCRPではなく、PTX3が有意なfactorであった。PTX3を用いることでCardiac inflammationを評価でき、hsCRPにかわり、拡張障害による心不全におけるBiomarkerとして有用であると考えられた。

質疑応答:
Q. PTX3が拡張障害のある心臓から産生されているのならどの細胞から産生されているのか。
A. 基礎実験は行っていないが、これまで報告されている研究から推測される。拡張障害と冠動脈の血管内皮障害、拡張障害と心筋の繊維化の関係が示されており、可能性として、拡張障害のある心臓ではendothelial cell, fibroblastから産生されているのではないかと考えられる。


学会の雰囲気:
今年のAmerican Heart Association Scientific Sessions(AHA)はフロリダのオーランドで開催された。AHAは世界中から循環器領域の研究者が集まり、世界でも最大規模の学会である。そのため、学会会場は広く移動するだけで大変であったが、今年から研究テーマ毎に7つのcoreに分かれ、発表場所を集中させており、移動のロスがなくよかった。昨今の不況の影響が製薬会社の展示ブースや参加者用のバックなどに表れており、参加人数も例年に比べ少ないようであったが、注目の発表には多くの参加者が集まり、どの発表会場でも活発な議論が交わされていた。

開催地の雰囲気:
オーランドはウォルト・ディズニーワールドをはじめ、ユニバーサルスタジオ、ウォーターパークなどのテーマパークが集まる観光都市である。気候も温暖であり、日中はむしろ汗ばむほどであった。また、学会期間中にオーランド近郊にあるケネディ宇宙センターよりスペースシャトルの打ち上げがあったが、残念ながら見ることはできなかった。ディズニーワールドという世界的に有名なテーマパークに行った気分だけでもと思い、ダウンタウン・ディズニーという土産店の集まるところに行ったが、それだけでも一つのテーマパークのようであった。やはり、今度は観光で来たい。

大学院生学会発表旅費等支援と学会に関する感想:
研究を行うことにおいて、モチベーションを保つことは難しいことであるが、このような国際学会に参加し刺激を受けることは学会に参加する一つの意義でもあると考えられる。しかし、今回で海外において開催される学会に出席するのは3回目(いずれもアメリカ)であるが、学会出席への費用は決して安いわけではない。この大学院生学会発表旅費等支援により、金銭的な心配なく学会に出席できたことは非常にありがたいと思う。今回、AHAに参加し、自分の研究分野を中心に勉強したことを今後の研究に生かしたいと思う。